「ミス・サイゴン」帝国劇場 観劇報告
昨日は「ミス・サイゴン」を観に帝国劇場へ行ってきました。
昨日まではハロウィンという事で、劇場内にもハロウィンの飾りつけが♪
「ミス・サイゴン」は2年前に2回観てます。
その時は初めて観た作品という事もあって、よく分からない部分もあったのですが、昨日観てみたら登場人物の細かい心情まで伝わってきて、いろんな場面で涙が・・・
直接的な戦闘シーンはありませんが、戦争の愚かさ、虚しさ、むごさが伝わってきます。
幕開けから娼婦館の過激なシーンがありますし、子どもには難しい内容でもありますし、他の東宝作品と比べたら少し人気は劣るかもしれませんが、とても重要なメッセージが込められていて目をそむけてはいけない作品だと思います。
今回は市村正親さんの最後エンジニア役とのことで、市村さんが出演される日を選んでみました。
2年前とは細かい部分で演出がちょこちょこ変わってました。
今年の公演から米軍引き上げのヘリコプターのシーンで客席にも風を送って臨場感を出しているようですが、下手側15列目付近にいた私のところにはそよ風程度の風が来てました。本格的な冬になると、風の演出はちょっと寒いかも?(笑)
それではまた、メインキャストの方々の感想を書いてみたいと思います。
ベトナム人とフランス人の混血エンジニア役の市村正親さんは、軽妙で良い意味でいやらしい感じの役作り。
客席を笑わせるアドリブもポンポン出てきて、何年もエンジニアを演じてこられた余裕を感じます。
そして、その軽妙さゆえにエンジニアの悲哀が余計に引き立ちます。本当にさすがですね!
60を過ぎてなお劣らぬ歌唱力とダンス、カーテンコールの時まで踊ってらっしゃいましたよ。すごいなぁ\(◎o◎)/!
ベトナムの少女キム役のキム・スハさんは、日本語のセリフでも歌でも全く違和感なしでした。
ロンドン公演でもキム役を演じていたようです。
最初の登場シーン辺りでは無垢でかわいらしい印象。クリスに出会った後の恋する乙女の一途な瞳。
タムが生まれてからは、クリスとの思い出を胸に、ただひたすらタムのためだけに生きる強さ。
それがぶれることなく最後のシーンにつながっていき、2年前に観た時は納得がいかなかったキムの自殺も納得がいく仕上がりでした。
スハさんは、キムの心情に合わせて声のトーンを変えて歌っているようなのですが、トーンを抑えている時の声が聞き取りにくいことがあって、それだけがちょっと残念でした。
とはいえきれいな歌声ですし、後半の上原くん演じるジョンとの掛け合いでも上原くんの声に負けることなくしっかり聞こえていたので、歌唱力はさすがだと思います。
アメリカ兵のクリス役の上野哲也くんは、2年前もクリス役をしていたようですが、私は今回初めて観ました。
気になったのは上野くんは歌になると急に力んでしまうような印象で、もうちょっと肩の力が抜けるといいですよね。
聴いていてなんだかこちらまで肩に力が入ってしまって疲れるんです・・・(^^;
それ以外ではとても情熱的なクリスで、ベトナムにいた時は本気でキムを愛していたんだというのが伝わってきました。それゆえアメリカでエレンと結婚した後に、キムとの間に息子が生まれていたことを知って苦悩する様子が切ないです。そして混乱して怯え子どものようにエレンにすがりつく姿が、エレンに「私はこの人を放っておけない。やはり私が傍にいなくちゃ」と思わせ、最後に悲劇につながっていくんだなと思いました。
クリスの同僚ジョン役の上原理生くんは、2年前に初めて観た時よりさらに役が深まっていたように思います。
冒頭のドリームランドのシーンで、戦場という過酷な環境の中でつかの間の休日に女におぼれ音楽に興じるジョンを演じることで、後半では米軍撤退後のベトナムの惨状を見て後悔とやるせなさなど複雑な気持ちから、ベトナムでブイ・ドイと呼ばれ差別される混血児たちを救う活動に乗り出すジョンの心情を浮き彫りにしていて、分かりやすかったです。
2幕冒頭にジョンが歌う「ブイ・ドイ」は、ジョンの思いをすべて込めた渾身の演説なのだということが伝わってきました。ジョンの一番の見せ場、本当に熱い演説でしたよ!
あ、そういえばクリスとキムが出会って2人のやり取りのシーンで、下手側でジョンがサックスを吹いていることに今回初めて気づいた!他の人たちが二人の邪魔をしないように、ジョンがサックスを吹いて皆を引きつけている感じなのかなぁ?
クリスの妻エレン役の知念里奈さん。2年前までキム役を演じていましたね。
結婚しても悪夢にうなされるクリスを支え、クリスが寝言でキムの名前を叫んでも許してきたエレンの苦悩、そしてキムに子どもがいることを知り、キムに初めて会った時の揺れる気持ち。昨日観た時に、それがすんなり心に入ってきました。
2年前に観た時は、エレンの気持ちが今一つつかめなかったんですが、今回知念さんのエレンを見て腑に落ちました。
歌詞を聞き取りやすかったのもありますし、キムをずっと演じてきたからこそ、他の人が演じるエレンとは違う視点からエレンという役を捉えていて、それが私にとっては分かりやすい表現だったのかもしれませんね。
ドリームランドの娼婦ジジ役の中野加奈子さん。ロンドンでもジジ役を演じたことがあるようですね。
ソロナンバーではジジの抱える悲しみと虚しさ、辛い中でも懸命に生きる強さが伝わってきます。
キムの婚約者トゥイ役の神田恭平くん。こちらも2年前のトゥイ役からさらに掘り下げて役作りが深くなってました。
出番が少ないながらも、キムに拒否されても信じ愛し続ける純粋な部分とアメリカ兵への憎しみとキムを奪われた悲しみが入り乱れ苦悩する姿、キムの子タムを見た瞬間に絶望に襲われ抑え込んできたものがあふれ出し、タムを殺そうとするまでの心の動きが表情から伝わってきて、良かったと思います。
メインキャストの感想として書けるのはこれくらいでしょうか。
この作品は特に、アンサンブルの皆さんがすごいんですよ。
ダンスもスポットライトが当たらない部分の細かいお芝居とかも、隅から隅まで全く手抜きがなくて素晴らしいんです!目がいくつあっても足らないくらい。
でも、誰がどこにいて何をしているかとか覚えてられないんですよね・・・(^^;
作品のテーマとしては重いですし、私は「大好き」とは言い難いですけど、素晴らしい作品で観る価値はあると思います。
今回の公演は、あと1回名古屋での大千秋楽のチケットをとってありますが、もう一回くらい観に行けたらなと思っています。懐に余裕があれば、ですけどヾ(;´▽`A“