『ミス・サイゴン』名古屋公演初日
昨日、『ミス・サイゴン』名古屋公演の初日を観てきました。
ベトナム戦争を題材にしたミュージカルです。
この作品は今回初めて観たのですが、第1幕は展開がすごく早いんですね。
予備知識がほとんどなしだったので、途中から混乱して頭の中で「?」が飛び交ってました(苦笑)
なので、滅多にプログラムを買わない私が、ストーリーを把握するために今回はプログラムを買っちゃいました。
名古屋公演千秋楽も観に行く予定なので、2回目はもっと作品の中にいろんなものを見出すことができるかな。
でも、サイゴン(現在のホーチミン市)の猥雑な雰囲気や戦争の残酷さ、本土で平和運動が巻き起こる中でベトナムへ派遣されたアメリカ兵たちの苦悩など、しっかり伝わってきました。
ベトナム兵やGIそれぞれの群舞は迫力満点、ドラゴンダンサーたちは素晴らしくかっこよかったです!
ただ、ドラゴンダンサーたちのアクロバットな振りは危険が伴う技でもあり、ケガで休演を余儀なくされた方もいらっしゃるようですね。これ以上、出演者の方々がケガすることなく無事に大千秋楽まで終えられますように・・・
この日の主なキャストは、エンジニア役・筧利夫さん、クリス役・原田優一くん、キム役・知念里奈さん、ジョン役・上原理生くん、エレン役・三森千愛さん、トゥイ役・泉見洋平くん、ジジ役・池谷祐子さんでした。
エンジニアは、ベトナムがフランス占領下にあった時期にフランス兵とベトナム人の母親の間に生まれた混血。母親はフランス兵に捨てられ、娼婦になり薬物におぼれて、子ども時代のエンジニアは母親の客引きという悲惨な生活を送っていた。だから、彼は生きるためなら何でもしてきたんでしょうね・・・
筧さんのエンジニアは、したたかに生きているようで、キムを放っておけないお人好しな部分も垣間見える、実は不器用な男という印象。アメリカに渡って成功することを夢見ながら、お人好しな部分が災いして、そのチャンスを自分でつぶしてしまったように見えました。
アメリカ兵(G.I)のクリスは、基本的に真面目な青年。
平和運動の機運が高まるアメリカ本土では居場所がなく、荒れ果てた戦場のベトナムにも居場所があるはずもなく、その中で見つけた唯一の安らぎがベトナム人の少女キムであり、ベトナム戦争が終わって帰国後、PTSDに苦しむクリスを支えたのが妻のエレン。彼にとってはどちらも大切な存在だからこそ、キムが自分の子を産んだことやその後も悲惨な生活していることを知って悩むんですよね。
ストーリーを確認してから思い返してみると、原田くんのクリスは、役の背景を彼なりに想像して掘り下げて、しっかり作り上げられたものなんだなって思います。
知念里奈さんが演じるキムは、かわいらしさと純粋さの中にも芯の強さを感じさせます。特に母親になってからのキムは、まだ幼い息子タムのためなら死をも恐れない強さがにじみ出ていました。
自分といても貧困の中でタムは幸せになれない、クリスに引き取ってもらえば教育もちゃんと受けさせてもらえるだろう、エレンならタムを託しても大丈夫だと思ったからこそ、キムはタムのために自ら命を絶ったんですね・・・
クリスの同僚で親友でもあるジョンは、クリスとキムが出会うきっかけを作った人物。
とはいえ、ジョンはあくまでも息抜きのためにクラブでの女遊びに誘っただけで、クリスがキムにあんなに入れ込むとは思ってなかったんでしょうね。
ジョンは体が大きく、仲間の中でも目立つリーダー的存在という設定なのかな?上原くんも岡さんも長身でガッシリ体型でリーダー役が似合いますよね。
上原くんのジョンは、熱血タイプ。クリスとは対等な立場でぶつかり合い、親友という言葉がピッタリ。クリスのことを心配していろいろ世話を焼き、時には心を鬼にしてクリスを叱咤激励する。
上原くん演じるジョンの熱い魂を感じさせる場面が、やはり2幕冒頭のブイドイたち(アメリカ兵とベトナム人女性との間に生まれた混血児のことを、ベトナムでは「ゴミ屑」という意味のブイドイと呼び差別した)の父親を探そうと訴える演説のシーンでしょうね。上原くんは熱く訴えかけるように歌い上げます。
あれなら気迫に押されて、例え内容をよく分かってなくても賛同しちゃいそうだわ(笑)
関係ないけど、上原くんは声もルックスも超タイプなので、生で歌声を聞けてめっちゃテンションあがっちゃった♪
クリスがアメリカに帰国後、彼の妻となったエレン。
戦争の後遺症で悪夢に苦しむクリスを必死に支えます。
三森さんのエレンは、妻としてクリスを支えながらも、クリスとの間に見えない壁を感じていて、それがキムとの思い出のせいだと分かり、揺れる心を繊細に表現しています。
そしてキムに会って彼女の純粋さと強さに触れて、一度は「クリスがキムを選ぶなら私は身を引いてもいい」とまで考える。その心境を歌うシーンは、クリスを愛するが故の切なさとキムへの敬意がヒシヒシと伝わってきます。
キムが幼い頃に親が決めたキムの婚約者トゥイ。
両親を目の前で殺され、生きるために身売りをせざるを得なくなったキムを助けに来たトゥイだけど、すでにクリスと出会って恋に落ちたキムは彼を拒否する。その場にいたクリスに追い払われて、一度は退散するものの、アメリカ軍が撤退した後、ベトナムの権力者にとなったトゥイはクリスと引き裂かれたキムを探し出して、迎えに行くんだけど、キムとクリスの子タムを巡って修羅場になり、タムを護ろうとしたキムに撃たれてしまう。
泉見さんのトゥイは、キムへの愛が途中から歪んでしまって、キムを追いつめて行ったような感じ。「あの憎いアメリカ兵との間に生まれた子どもは許せない」とタムを殺そうとするシーンは鬼気迫るものがありました。
エンジニアの店で働く踊り子兼娼婦の一人ジジ。
娼婦たちを代表する形で、本当の胸の内を歌い上げます。
本当はこんな仕事したくない。いつか映画みたいに誠実な紳士が現れて、この悲惨な状況から救い出してくれることを夢見ているけど、現実にはそんなことは起こらなくて絶望しかない、と。
池谷さんのジジは、普段は気丈に振る舞っていたけど、ジョンにアメリカ行きを拒否されたことから、ついに我慢の限界に達してキレてしまう。でも、生きるために娼婦をやめることはできず、絶望のふちで虚しさと悲しみの気持ちを全身から絞り出すように歌い上げます。やり場のない怒りと悲しみが伝わってきて切ないですね。
エンジニアが夢を歌い上げる「アメリカンドリーム」の場面で、手拍子したかったけど、何となくしづらい雰囲気だった。名古屋では歌の内容までしっかりと聞きとりたいと思ってらっしゃる方が多いのかなと思います。
全員の印象を書くのは大変なのでここまでにしておきますが、アンサンブルの方々も皆さんそれぞれの場面でチョイ役でもを気を抜くことなく、しっかりその役を生きていて、その気迫とパワーはすごいと思います。
重い題材ではあるものの、なんかパワーをもらえるというか、「私も頑張ろう!」と思える作品ですね。
もう一度観るので、役替わりの駒田さんエンジニア、玲奈ちゃんキム、岡さんジョン、神田くんトゥイが楽しみです♪
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