「ジキル&ハイド」名古屋公演千秋楽

2022年10月11日

今日は「ジキル&ハイド」を観に愛知県芸術劇場大ホールに行ってきました。

なんと愛知県芸術劇場はこの公演をもっていったん閉鎖し、改築工事が行われるそうです。知らなかった・・・

中日劇場も今日で閉館しちゃったし、芸術劇場は改築が終わるまでとはいえ名古屋は劇場がほとんどなくなっちゃうじゃないですかぁ~!さみしいよ。+゚(゚´Д`゚)゚+。

さ、気持ちを切り替えて・・・ ジキル&ハイドは明るいストーリーではないのですが、臨床心理に関わる者としても興味深い作品です。

この作品を観たのは2回目ですが、前回とは違う捉え方ができて、また他の人もそれぞれ違う捉え方をしていて面白い作品だと思います。 ツイッターにも書いたんですが、今回私はジキル博士が自我で、ハイドは今までジキルが心の奥底の無意識下に抑圧してきた欲求や感情の大きな塊が人格として出てきたものとして観ていました。(作品の捉え方に正解はないと思いますので、あくまでも一つの見方として読んでくださいね)

真面目で紳士なジキル博士が抑圧してきたものは、人を殺したいくらい憎む気持ちや怒り、差別意識、承認欲、性的欲求、嫉妬、悲しみ、恐怖心などでしょう。

そして、ジキル博士が作った薬は人の心の『善』と『悪』を分けるという事になっていますが、彼の言う『悪』というのはおそらく彼自身が「これは悪いことだから考えたり感じたりしてはいけない」と抑圧してきたものだから、要するに善と悪を分けるという事は抑圧してきたものを無理やり全部引っ張り出してしまう事。

「こんなこと考えてはダメだ。こんな風に感じてはいけない」と本当の気持ちを抑え込んでいると、逆にその気持ちが強く感じられますから、抑圧してきたものを薬で無理やり全部引き出してしまえば、自分でコントロールできなくなり、正常な精神状態でいられないのは当然だろうなと想像できます。

薬を飲んだジキル博士の心は善と悪に分かれたのではなく、ジキル博士自身はそのままで今まで抑圧してきたの大きな塊がハイドという人格となって表出しただけだと考えたら、すごくスッキリ納得できたんです。

そんな風に観ると、普段は人の心の中で行われている葛藤をジキルとハイドという分かりやすい形で表現されているなと思います。

作品の中でハイドはジキル博士の研究の邪魔をする人たちを次々と殺していきますが、それを例に挙げれば「俺のことをバカにして研究の邪魔をしやがって!あいつらがいなければ研究がうまく行くのに」と思う自分と「そんなこと考えてはいけない」と抑え込もうとする自分との葛藤。

でも抑え込もうとすればするほど、その感情や欲求はより強力なパワーを持って出て来ようとする。それがハイドの暴走なのだと思いました。

では、またメインキャストの方々を中心に感想を一言ずつ書いてみようと思います。

ジキルとハイドを演じる石丸幹二さん。

2年前より、さらにジキルとハイドの関係性が分かりやすくなり、ハイドになった時の迫力も増しているように感じました。

また、あえてジキルとハイドのどちらなのかあいまいにしている部分もあったように思います。

そして何より石丸さんご自身が役を楽しみながら演じてらっしゃるのが伝わってきました♪

娼婦ルーシー役の笹本玲奈さん。

2年前はジキルの婚約者エマ役をされてましたね。

玲奈ちゃんのルーシーは、表面的にはすごく強がって生きているけど、純粋でかわいらしく、どこかはかなげ。

そして、プライベートでは結婚・出産を経験された玲奈ちゃん。以前よりも強さと色気が加わってルーシーにもそれが反映されている感じがします。

ジキルに会うまでは人生を諦めて流されて生きて来た感じだけど、ジキルに人として扱ってもらえたことで希望を見出した・・・そんな印象でした。

ジキルの婚約者エマ役の宮澤エマさん。

ちょっとやそっとではくじけない強さと聡明さを感じさせるエマになっています。

無事にジキルと結婚できていたら肝っ玉母ちゃんになっていそうな安心感があります(笑)

1人になったとしてもしっかり生き抜いていけそうで、最後の場面でもエマはこの先どうなるの?という心配は出て来なかったくらい。

エマちゃんは歌声もきれいで、ジキルとやルーシーとのデュエットも聞きごたえがありますね。

エマちゃんが演じるエマ、文章が少しややこしくなってすいません(^_^;)

ジキルの友人で弁護士のジョン・アターソン役の田代万里生さん。

一見まじめそうに見えて実はお茶目なところもあるジョンでした。

石丸さんと年の差があるから友人同士に見えるのかしら?ってちょっと心配しましたが、ひげも付けてしっかりジキルの友人ジョンとして舞台に生きていましたと思います。

様子のおかしいジキルの心配をして訪問した場面も友人への思いの強さを感じました。

歌に関しては万里生くんの得意分野ですから、なんの心配もなく安心して聴いていられますね♪

エマに好意を抱き、ジキルを快く思わないストライド役の畠中洋さん。

ジキルをバカにしたような態度が憎たらしくていいですねぇ。

いかにも器の小さい男を飄々と演じてらして、最後の場面は哀れさが引き立ちます。

また今回エマがいかにも強そうなので、全く相手にされないストライドが余計小物に見える(笑)

ジキル家の執事プール役の花王おさむさん。

ちょっととぼけたような演技で笑いを誘う、なんだかキュートなおじいちゃん執事という印象。 すごくいい味出しておられます。

エマの父、ダンヴァース・カルー卿を演じる福井貴一さん。

エマのことを心から愛していて、将来を案じるお父さん。

娘を嫁に出す父親の心境が分かりやすく伝わってきます。 そして、ダンディーで素敵です♪

ハイドに殺されてしまう大司教(宮川浩さん)、グロソップ将軍(阿部裕さん)、サベージュ伯爵(川口竜也さん)、プルーブス卿(松之木天辺さん)、ビーコンズフィールド伯爵夫人(塩田朋子さん)の5名。

出番自体はそれほど多くないのですが、それぞれにキャラが立っていて面白かったです♪

2階後方の席だったので、アンサンブルの皆さんのお顔まではよく見えなかったのですが、すごいアクロバットなことしてて「おおっ!」と思ったり、コーラスも素敵でしたし見ごたえがありました。

本当に歌うまさん揃いのカンパニーで耳福でした(´∀`
あと、ちょっとイリュージョン的な仕掛けもあったりするので、あれはどうなってるんだろう?って考えながら観るのも面白いですね(^-^)
再演があれば、またぜひ観に行きたいです。